【大田区 36町別】住宅地の地価ランキング——17年の値上がり率も(2026年最新版)
大田区の住宅地・公示地価を36町並べてみました。2026年最新値と2010年からの17年値上がり率、駅入りの地価マップまで。
大田区にはいくつ「町」があるかご存じでしょうか。
最新2026年版で住宅地の公示地価が公表されているのは36町。町ごとに最大1.70倍の差があります。
この1.70倍という格差は、これまで取り上げた板橋2.13倍・中野2.31倍・杉並2.15倍・豊島1.73倍・北3.16倍・世田谷4.10倍と並べると、23区横展開のなかで最も格差が小さい水準です。面積60.83km²という23区最大級の広さに住宅地が広く分布し、駅数は40駅で23区トップ、さらに首都高・第二京浜・環七環八が縦横に走り、そして区内に羽田空港を抱える――大田区の住宅地は、鉄道・道路・空港の三層インフラに支えられた「平らに広がる区」の輪郭を描き出します。
はじめに:この記事で出てくる用語、ざっくり説明
Q. 「公示地価」とは?
A. 国が毎年調べて発表している「この場所の土地、1m²あたりいくらが妥当か」の価格です。実際の売買価格とは多少ずれますが、不動産屋さんが言う「相場」のもとになる、エリア比較の最も中立な物差し。
Q. 「中央値」とは?
A. ある町の中に複数の調査地点があるとき、順番に並べた真ん中の数字を採用しています。1つだけ飛び抜けて高い土地に引っ張られないので、町の「いつもの値段」を表すのに向いている計算方法です。
Q. なぜ2026年1月1日時点のものが最新版?
A. 公示地価は毎年1月1日時点を調査して、その年の3月に発表されます。本記事は2026年5月時点で確定取得できた最新データ(2026年版)を使っています。
これらの詳しい話は、記事末尾の「補足注記」にもまとめてあります。
上位10町

データ出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」公示地価2026年(XPT002)/大田区・住宅地・町別中央値
上位10町の数字(2026年・住宅地・中央値)
- 田園調布:853,000円/m²
- 山王:816,000円/m²
- 北千束:786,000円/m²
- 南千束:766,500円/m²
- 久が原:697,500円/m²
- 北馬込:693,000円/m²
- 中馬込:681,500円/m²
- 蒲田:671,000円/m²
- 南雪谷:662,000円/m²
- 雪谷大塚町:655,000円/m²
上位10町の沿線を見ると、東急(東横線・目黒線・多摩川線・池上線・大井町線)が圧倒的に多く、ほぼすべてが「城南台地」と呼ばれる西側エリアに集中しています。JR京浜東北線の山王(大森駅徒歩圏)が2位に入る以外、東急系列が10町中ほぼ全てを占める形。さらに第二京浜(国道1号)と環状8号線が田園調布・馬込周辺を貫いており、上位エリアは鉄道だけでなく道路ネットワークでも厚い層を持ちます。首位は田園調布の85.3万円/m²。1923年に渋沢栄一の田園都市構想で生まれた日本初の本格的な高級住宅地で、現在もこの区のシンボル的存在です。
下位10町

データ出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」公示地価2026年(XPT002)/大田区・住宅地・町別中央値
下位10町の数字(2026年・住宅地・中央値)
- 仲池上:562,000円/m²
- 田園調布南:560,000円/m²
- 西糀谷:545,000円/m²
- 大森中:540,000円/m²
- 蒲田本町:540,000円/m²
- 東糀谷:510,000円/m²
- 仲六郷:508,000円/m²
- 南六郷:505,000円/m²
- 東六郷:505,000円/m²
- 大森東:502,000円/m²
下位10町は、大田区の東半分――湾岸・空港寄り、または多摩川(六郷川)沿いの低地――に集中しています。最下位「大森東」50.2万円/m²は、すでに公開した世田谷の中位帯〜中野・杉並の下位帯と近い水準で、23区の住宅地としては中位帯にあたる数字。下位でも50万円台前半というのが、大田区のフラット構造を象徴しています。値段で見て劣るわけではなく、ここから先は産業道路・首都高湾岸線・京急空港線が支える、京浜工業地帯×羽田空港のリアリティが地価に静かに織り込まれているエリアです。
全36町を一覧で

データ出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」公示地価2026年(XPT002)/大田区・住宅地・町別中央値
36町を並べてみると、85万円から50万円までほぼ等間隔のなだらかな下降が続き、世田谷で見たような上位と下位の段差はほとんどありません。最大1.70倍という格差は、これまで取り上げた板橋・中野・杉並・豊島・北・世田谷のいずれよりも小さく、大田区の住宅地は東京で最もフラットに分布する区のひとつ。鉄道40駅と幹線道路が縦横に走り、どこの町でも一定の利便性が確保されている――そのインフラの厚さが、地価の平準化に直結しています。
値上がり率ランキング(2010→2026、17年)
値上がり率トップ10

データ出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」公示地価(XPT002)/大田区・住宅地・町別中央値/2010-2026年
値上がり率トップ10(2010→2026、住宅地中央値)
- 北馬込:+67.8%(413,000 → 693,000円/m²)
- 山王:+67.7%(486,500 → 816,000円/m²)
- 中馬込:+66.2%(410,000 → 681,500円/m²)
- 蒲田:+63.1%(411,500 → 671,000円/m²)
- 南千束:+61.9%(473,500 → 766,500円/m²)
- 西蒲田:+55.9%(415,000 → 647,000円/m²)
- 東馬込:+55.7%(395,000 → 615,000円/m²)
- 北千束:+55.2%(506,500 → 786,000円/m²)
- 下丸子:+54.6%(376,500 → 582,000円/m²)
- 西糀谷:+52.2%(358,000 → 545,000円/m²)
17年で値上がり率トップ10を見ると、大田区の地価上昇は3つの構造が引っ張っていることが見えてきます。
まず馬込(北馬込+67.8%、中馬込+66.2%、東馬込+55.7%、3町でトップ10入り)。東京の地下鉄路線で唯一の純大田区駅である都営浅草線馬込駅周辺で、城南台地のなかでも比較的「手の届く高級住宅地」として再評価が進みました。馬込は第二京浜(国道1号)に直結し、車派にも便利な立地。鉄道+道路の両アクセスが、戸建て層に好まれる住環境を支えています。
2つ目は蒲田(+63.1%)と西蒲田(+55.9%)。これは2025年10月に計画認定された新空港線「蒲蒲線」の効果です。JR/東急蒲田駅と京急蒲田駅を地下で接続し、2030年代前半に開業予定。事業費1,248億円・10年累計の経済波及効果5兆7,000億円規模の大型事業で、JALUX・安田不動産・京急による複合ビル(2027年開業)など蒲田駅周辺の再開発も同時進行しています。「3つの蒲田駅」が分断されていた現状から、ターミナル機能の統合へ――地価はその将来期待を織り込んで動いています。
3つ目は山王(+67.7%)と千束(南+61.9%、北+55.2%)。山王はJR大森駅徒歩圏の高台で、戦前から続く高級住宅地。千束は東急大井町線の沿線で、自由が丘・大岡山に隣接した山の手住宅地。いずれも「山の手の延長としての大田区西部」のリアリティを示す動きです。
興味深いのは、首位の田園調布(+41.9%)がトップ10入りしていないこと。すでに高水準で伸びしろが小さい高級住宅地より、手前の馬込・山王、そして蒲蒲線で機能強化される蒲田――こちらが、大田区の値上がりの主役になっています。
値上がり率ボトム10

データ出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」公示地価(XPT002)/大田区・住宅地・町別中央値/2010-2026年
値上がり率ボトム10
- 大森西:+44.8%
- 中央:+43.7%
- 田園調布南:+42.9%
- 東嶺町:+42.1%
- 田園調布:+41.9%
- 南馬込:+40.6%
- 南雪谷:+40.6%
- 東雪谷:+40.3%
- 雪谷大塚町:+39.7%
- 上池台:+37.3%
ボトム10を見ると、最下位「上池台」でも+37.3%、ほぼ全町で+40%前後の安定上昇。全36町プラス成長は23区横展開の標準値どおり、東京の住宅地は値下がりした町は1つもないという結論をここでも確認できます。興味深いのは、ボトム10に田園調布・田園調布南・東雪谷・南雪谷・雪谷大塚町といった伝統的な高級住宅地が並んでいること。すでに高い水準にあるため伸び代が限られているという、世田谷の成城・喜多見と似た構造です。「伸びていない=魅力が落ちた」ではなく、「高値で安定している」と読むべきセクションです。
全28町、17年の値上がり率

データ出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」公示地価(XPT002)/大田区・住宅地・町別中央値/2010-2026年
地価マップ(地点と駅)

データ出典:(地点・価格)国土交通省「不動産情報ライブラリ」公示地価2026年(XPT002)/(駅)国土数値情報 駅データ S12-25・国土交通省/(境界線)国土数値情報 行政区域N03-21
地図の読み方
- 大田区の形をした地図の中に、小さな丸い点(地価ポイント)と黒い四角(駅)が散らばっています
- 濃い赤色の丸ほど、その場所の地価が高い
- 薄い黄色の丸ほど、その場所の地価が低い
- 黒い四角は大田区内の駅(40駅)
- 地図の右側に色の目盛り(カラーバー)があり、最も赤い地点で 1m²あたり85万円台、最も黄色い地点で 50万円台 あたり
地図にすると、赤色の濃い地点は区の西半分――田園調布・山王・馬込・千束のあたり――に集中し、東に向かうほど黄色(=低価格帯)が広がります。40駅という23区最多の駅密度と幹線道路網がほぼ全域に行き渡っているため、地価のグラデーションは穏やかで、急峻な段差は見当たりません。「都心からの距離」よりも「沿線ブランドと土地利用の歴史」で地価が決まる――そんな構造が浮かびます。
首位と末尾の17年推移

データ出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」公示地価(XPT002)/大田区・住宅地・町別中央値/2010-2026年
首位「田園調布」と末尾「大森東」の17年カーブを並べると、両方ともゆるやかな右肩上がりで、世田谷で見たような「急角度と横ばい」の対比はありません。田園調布は55万円台→85万円台へ、大森東は32万円台→50万円台へ、伸び率はほぼ同じで、絶対額の差を維持したまま並走する形です。これは大田区がフラットな構造を持つことの裏付けで、上昇局面でも下降局面でも「みんなでそろって動く」区である可能性を示唆しています。
3エリアで整理
36町の数字を、ざっくり3つのエリアに分けて見ると、大田区の輪郭がより掴みやすくなります。
- 西部(城南台地の高級住宅地):田園調布・田園調布本町・山王・馬込(北・南・東・中)・千束(北・南)・久が原・雪谷・嶺町。東急(東横・目黒・多摩川・池上・大井町)と都営浅草線(馬込駅)が走り、戦前からの高級住宅地が連なる。道路は第二京浜(国道1号)と環八が縦走。住宅地ランキング・値上がり率ランキングの主役はここ
- 中央(蒲田・大森中心の交通ハブ):蒲田・西蒲田・新蒲田・蒲田本町・大森北・大森中・大森西・中央。JR京浜東北線+東急多摩川線・池上線+京急本線が集中する、3つの蒲田駅と大森駅を擁する区の重心。蒲蒲線の認定(2025年10月)でターミナル機能の統合フェーズへ。道路は環状7号と国道15号(第一京浜)が東西を貫く
- 東部(湾岸・空港のものづくり×イノベーション):羽田・大森東・東糀谷・西糀谷・北糀谷・南六郷・東六郷・仲六郷・京浜島など。京急空港線・東京モノレールが走り、首都高湾岸線・羽田線・産業道路が物流の動脈を成す。羽田空港の区内立地と羽田イノベーションシティ(HICity、2023年開業の空港跡地複合施設)が示すように、ここは「住宅地」だけで語れないエリア
「東部が劣っている」という話ではありません。大田区は東京で唯一空港を区内に持つ区で、40駅という23区最多の鉄道網と首都高湾岸線・羽田線・第二京浜・産業道路という幹線道路網を兼ね備え、さらに京浜工業地帯のものづくりと羽田イノベーションシティのスマートエアポートシティという産業基盤を持っています。山の手住宅地としての西部、3つの蒲田駅が統合される中央、空港と物流の東部――この3つが揃っているのが、大田区の輪郭です。
「城南台地の高級住宅街」を取るか「蒲蒲線で機能強化される蒲田の利便性」を取るか「羽田アクセスとものづくり×イノベーションのリアリティ」を取るか、その3つの選択肢が一つの区の中で並んでいる。36町分のバリエーションは、そのまま暮らし方の幅でもあります。
大田を、町別に見ると
36町、最高85.3万円から最低50.2万円、その差1.70倍。17年の値上がり率は+37.3%〜+67.8%、全町プラス成長。
「大田区」とひと言でいっても、西の城南台地で田園調布・山王・馬込が高級住宅地として伸び続け、中央で蒲田が蒲蒲線開業(2030年代前半)に向けて駆け上がり、東で羽田空港とイノベーションシティが新しい産業集積を形作る――36町分のバリエーションは、そのまま「鉄道40駅×幹線道路×羽田空港」を抱える、東京の南の玄関口としての大田区の輪郭そのものです。1.70倍というフラットな格差の裏には、どの町でも一定水準の利便性が確保されている、というインフラの厚みが横たわっています。
参考データ・出典
この記事のグラフ・地図・数字は、すべて公的に公開されているデータをもとに筆者が集計・作図したものです。
公示地価・地価調査
国土交通省 不動産情報ライブラリ XPT002(地価公示・地価調査API)
- 期間:2010年〜2026年(17年分)
- 対象:大田区内・住宅地の標準地(町別中央値で集計)
- データ取得:2026年5月13日/大田区内 約2,302レコード
- 公開URL:国土交通省 不動産情報ライブラリ
駅データ(地図上の駅プロット)
国土数値情報「駅」S12-25
- データ:駅別の座標・路線情報・年次乗降客数
- 公開元:国土交通省 国土数値情報ダウンロードサービス
行政区域(地図の境界線)
国土交通省 国土数値情報「行政区域」N03(2021年版)
- データID:N03-21_13_210101
- 配布元(GeoJSON変換版):smartnews-smri/japan-topography
- 利用範囲:大田区の市区町村境界の描画のみ
補足注記
■「公示地価」とは
「この場所の土地、1m²あたりいくらが妥当か」を国が毎年調べて発表している価格のことです。実際に売買される値段とは多少ずれますが、「うちの近所の土地、いくらくらいなのか」をエリア単位で比べたい時の最も中立な物差しとして使われています。不動産屋さんが言う「相場」のもとになる数字、と理解してもらえれば十分です。
■ なぜ2026年版が最新なのか
公示地価は毎年1月1日時点の価格を、その年の3月に発表する仕組みです。本記事は2026年5月時点で確定済みの最新データ(2026年版)を使っています。次回更新時には2027年版・2028年版を順次組み込んでいきます。
■「中央値」とは
同じ町に複数の調査地点がある場合、その町の値は中央値を採用しています。中央値とは、順番に並べたときに真ん中にくる数字のこと。たとえば「100、150、200、500、1000」という5つの数字があるとき、平均は390ですが、中央値は200です。1つだけ飛び抜けて高い土地に引っ張られないため、町の代表的な値を示すには中央値のほうが向いています。
■ 地点数のばらつき
町によって調査地点の数は1〜6件と差があります。地点が1件しかない町は「その1地点の値段=町の値」となるため、地点が複数ある町と比べると参考値の意味合いが少し変わります。
■ 用途地域は「住宅地」の大区分でまとめている
同じ「住宅地」の中にも第一種低層住居専用地域・第二種中高層住居専用地域・準住居地域などの細分がありますが、本記事では「住宅地」の大区分でまとめて集計しています。
■ 数字の正確性について
本記事は公的データの集計をもとにしていますが、原データの誤り・筆者の処理ミス・AIによる集計補助のエラーなど、誤差が含まれる可能性があります。目安として読んでいただくのが正解です。正確な数字は、必ず一次データ(不動産情報ライブラリ)でご確認ください。誤りのご指摘は歓迎します。